CPU 製造の話が面白い

語弊のある例えかもしれないが、1ヘクタール(100m x 100m)の山の中で採取できる松茸は数が非常に少ないため、その希少性から値段は高くなる。しかし椎茸であれば収穫量が多く需要と供給のバランスから値段は安くなる。同じ土地から採れるキノコでも収穫量や希少性から値段が異なる事がある。これと同じような事が CPU 製造でも起きている。

シリコンウェーハからのダイの採集

Intel Core シリーズ

例えば、Intel の Core シリーズには i9/i7/i5/i3 などの製品群がある。これらの製品は、主にコア(スレッド)数やキャッシュメモリーの容量などによって製品ブランドが分かれている。Raptor Lake - Wikipedia

また、Core i7 ブランドの中でも 14700K, 14700KF, 14700, 14700F など製品モデルが多数存在している。

これらの違いを簡単に説明すると、F とついているものは CPU に含まれる内蔵 GPU(iGPU)が無効になっているため使えない。そのため NVIDIAAMD などの専用の GPU が別に必要になってくる。

K と付いているものは動作周波数が高い。14700K の P Core は 3.4 GHz だが、K が無い14700 と 14700F の P Core は 2.1 GHz で動作する。

この違いは製品価格にも表れており、内蔵GPUもあり動作周波数が高い 14700K が $409 で、内蔵GPUが無く動作周波数も低い 14700F が $359 と同じ Core i7 ブランドでも $50 の開きがある。

このモデルの違いはどこから来るのか

CPU の製造では一枚のウェーハーの上に多数のダイを作り、それを個別に切り分けてパッケージングして出荷する。ダイを作るウェーハーは、完全な均一という訳ではなく、場所によっては不純物が含まれていたり、中心部分と周辺部分の温度差などの物理的な違いでほんの僅かに性質が異なることがある。

これが、ダイの製造という nm (ナノメートル)単位の非常に微細なプロセス技術が使用されるときに影響が出る可能性がある。製造する場所によっては不良品になってしまうダイが生まれ、歩留まりが悪化する。

最初の話に戻るが、1ヘクタールで採取できる松茸と椎茸の数には違いある。味が美味しく香りが良い(個人の感想)松茸は、収穫量が少なくそれだけ希少性がある。同じ事が CPU の製造でもいえる。一枚のウェーハから採取できる、高周波数で動作可能で、GPU も問題無く使用できるダイもそれだけ希少性が高くなる。

つまり、製造時のバラつきにより、GPU コアが正しく動作しなかったり、目的の周波数での動作が不安定になるダイが採取できてしまう。これが恐らく、CPU のモデルの差になっている。

使えないブロック(iGPU)を無効にすることで別モデルとして製品チェックのテストを通過することが出来る。性能の差はあれ、一枚のウェハーから出荷できる CPU の数が増えればトータルの製造コストを下げることが出来る。これは結果として全体的な製品価格にも反映されるので、非常に合理的で経済的にも優れた販売手法だなと思う。

特に、CPU製造という複雑で高度な技術と、高い設備投資が必要な分野では。

ちなみに i9 や i7 はダイのレイアウトが異なる?ため、全て i9 で製造して使えないダイを無効化したものを i7/i5/i3 として販売している訳ではないみたい。 i9 はコア数が多く、ダイの面積も大きいため1枚のウェーハーで作れるダイの数も少なくなる。そのため、全てを i9 として製造すると、逆にコストが高くなるのかな、と。

参考

Wafer (electronics) - Wikipedia

Intelの最新CPUを支えるテスターはロボと人力! マレーシアのキャンパスで行われていること:大人の社会科見学(1/4 ページ) - ITmedia PC USER

CPUの作り方 - 富士通

第230回 AMD Ryzenが高コストパフォーマンスを実現した3つの理由:頭脳放談 - @IT

Coffee Lake - Microarchitectures - Intel - WikiChip